《MUMEI》

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ひと通り考えをまとめ、わたしは、分かったよ…と呟いた。ようやく納得したわたしを見て、由紀はホッとしたようにため息をつく。

わたしは再び、ドアの方を見た。いつの間にか、清水君の姿は消えていた。



−−−アイツは仁菜を恨んでる。



由紀に言われた言葉を思い出して、少し、背筋が寒くなる。



………なんで、そーなんのよ。

どうして、わたしばっかり。



鬱屈とした思いをひとり抱えているわたしに、

最後に、由紀が、


「【レン】に言われたことは、忘れろよ。犬に噛まれたと思ってさ」


大人びた口調で、そう諭した。


その言葉を噛み締めているわたしの耳に、

少し離れた廉の席から、女子たちの楽しそうな笑い声が聞こえてきた。





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