《MUMEI》

.

「なに?なんか作ってんの??」


わたしは立ち上がって尋ねると、晃は頷いた。


「今日はクッキーでした☆」


待ってて!と、一言断ってから晃は一旦窓の傍から姿を消し、すぐになにかが入ったビニール袋を持って戻ってきた。

袋を差し出しながら、晃は笑う。


「焼きたて!おすそ分けしてあげる」


晃の爽やかな笑顔に、

感動で、胸が熱くなった。



………やっぱり、

もつべきモノは(ゲイの)友達よね!



「…ありがと」



消え入りそうな声でお礼を言い、

込み上げてくる涙を必死に堪えながら、差し出された袋に手を伸ばす−−−



−−−そのとき。



「あッ!!」



突然、晃が声をあげた。

彼はわたしではなく、その後ろを呆然と見つめていた。



………なに??



不思議に思って振り返ると、少し離れたところにある渡り廊下に、人影を見つけた。


スラッとした長身の体躯。キャラメルブラウンの髪。整った顔立ち。

そして、

一般人にはない、独特の存在感…。



紛れも無く、北條 廉だった。


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