《MUMEI》 . 呆然としたわたしの顔を見て、清水君はおかしそうに笑う。 「そんな顔すんなよ」 教室に入りながら、低い声で呟いた彼を、わたしは全力で睨みつける。 「なによ?なんか用?」 気をゆるせば、恐怖で声が震えてしまいそうだった。 −−−アイツは仁菜を恨んでる。 今日、由紀が呟いた言葉が、頭の中に蘇ってきた。 気丈に言ったわたしに、清水君は笑みを消し、真面目な声で言った。 「話があるんだよ。ちょっと顔貸せ」 完全な上から目線の物言いに、わたしはムッとした。そんなふうに、命令される筋合いはない。 「わたしは話すことなんかない。もう帰るから」 じゃあね、と早口でまくし立て、バッグを肩にかけると、彼の脇を、スタスタ横切ろうとした。 その、通りすがりに、 清水君は、わたしの腕を掴む。 簡単には振り払えないほど、ものすごい力だった。 . 前へ |次へ |
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