《MUMEI》 裏切りの挽歌=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=* ―――…その頃。 カジュアルウェアに身を包んだ男が一人、バーのカウンターに腰かけていた。 アルビノ体質の肌色に、四角い顔の輪郭… その男は食パンマンだった。 左手の袂にロックのウイスキーを注いだグラスを置き… 右手の指先で、一枚の名刺をつま弾くように弄んでいる…。 その名刺には『ドキンちゃん・ニコニコ・ローン』という社名とともに、数日前に一夜を共にした女の名前が記されていた。 退職につきS専務 改め 食パン「帰るべき住処は、もう無い………か…。」 ――… カラカラン …。 何気なく呟いた独り言に呼応するかのように、グラスの中の氷が揺れた…。 前へ |次へ |
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