《MUMEI》 …と考えてみれば、今はもう昼。 残りの時間の潰し方を考えれば、普通に授業に出ることしか思い浮かばなかった。 けれど心ここにあらずで過ごす。 …授業料のムダだな。 深く息を吐いた。 授業が終わると、アタシは教室を出て、屋上へ来た。 例の給水塔の上にハシゴを使ってよじ登り、沈みゆく太陽を見つめた。 ぞくっ…! 背筋が痺れた。 真っ赤な夕日が、血の色を思い出させる。 そしてあの味も口の中によみがえる…! 強烈なノドの渇きを感じる。 ああ…ダメだ。 アタシは懐から、ナイフを取り出した。 銀色の薄い刃が、夕日の赤に照らされ、妖しく光り輝く。 そのまま刃を手首に当てた。 ―が。 「また、血を飲むつもり?」 声をかけられ、ハッと我に返った。 この声はキシじゃない! 聞いたことのある、この声はっ…! 前へ |次へ |
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