《MUMEI》 真実アタシはゆっくり振り返った。 ハシゴを上って来たのは―サガミ、先生だった。 別の意味で、ノドが渇いた。 「サガミ先生…。今、何て…」 「キミは自分の血しか、受け付けないのかい?」 サガミ先生は穏やかだった。 全く動じる様子が無いのが、今は怖い。 アタシは立ち上がった。 「どうして…」 「キシくんと同じ理由だよ。キミが自分の血を飲むところを、見たんだ」 笑顔で返答してくる。 「でも僕はキシくんのような独自のルートは持っていなくてね。情報不足なんだ。だから、失敗してしまったのかな?」 そう言って肩を竦めて見せる。 …もしかしなくても、連続猟奇殺人事件の犯人は…。 「サガミ先生、あなた…だったんですか?」 「うん。僕だよ」 またあっさりと返した。 「どうして…!」 「それはボクから説明しましょうか?」 キシがハシゴを上って来た。 「キシ!」 「お待たせしました、ヒミカ。ようやく証拠を押さえられましてね」 キシは向かいのビルを見た。 「ヒミカ、アナタは少し、注意力が不足気味だったようですね」 「それは…!」 否定のしようが無い。無かった。 前へ |次へ |
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