《MUMEI》 まさかキシだけではなく、サガミ先生にまで見られていたなんて…! 「でもサガミ先生が、ヒミカの儀式を見たのはここじゃないんですよ」 「えっ?」 アタシは思わずキョロキョロと辺りを見回し…そして気付いた。 例の…料理教室のある場所から、ここは丸見えだ。 「まあ距離がありますし、一応逆光のことを考えてたみたいですけど、ちょっと頭の働く人なら分かってしまう行為ですからね」 角度とかで…バレてしまう可能性を考えていなかった。 「サガミ先生、あなたがヒミカの儀式を見たのは、例の料理教室ですね?」 「うん。そうだよ」 キシの問い掛けにも、サガミ先生は笑顔で答える。 「例の料理教室、確かに肉料理専門らしいですけど、あなたも野菜料理を教えているんですよね?」 「…うん」 ふと、サガミ先生の表情が曇った。 「そこで被害者達を知ったんですね? 親子料理教室なんてものもやっていれば、幼い子供と出会うこともあったでしょうね」 「あっ…!」 思わぬところから、被害者の接点が見つかった。 そうだった。 サガミ先生は野菜料理専門の先生。 そして被害者達は皆、ベジタリアン―菜食主義者ばかりだった。 肉料理のことばかり頭にあったけど、事件の角度を変えれば、サガミ先生が怪しい事が分かる。 「被害者達はまさか料理教室の先生が、殺人者だなんて思いもよらなかったでしょうね。しかも本職は野菜料理専門担当、事件が世間に明らかになっても、あなたは疑われなかった」 前へ |次へ |
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