《MUMEI》 挑発するな! キシ! 「だろうね。だから考えたんだ。キミの中の僕を、永遠にする方法を考えたんだ」 先生はアタシを見たまま、ナイフの刃を自分の首に当てた。 そして… ブシュッ! …血が、舞った。 「…っ! サガミ先生ぇ!」 アタシの絶叫は、空しく屋上に響いた。 サガミ先生は血に塗れながらも、笑顔で倒れた。 キシは眼を丸くし、言葉を無くした。 アタシは無我夢中で、先生の側に寄った。 「こんなことしてっ、意味があるって言うんですか!」 「ある…よ。キミはこ…したら、きっと、忘れ…ない、から…」 「何でっ…!」 どうしてこんなことになった? いつからおかしくなった? アタシは誰にも傷付いてほしくないから、自分を傷付けていただけなのに! 血に塗れた先生の手が、アタシの頬に触れた。 いつの間にか流れていた涙を、拭ってくれる温かな手。 でも…急速に熱は失われていく。 アタシの血族としての能力は、血肉を食す代わりに、自分の身体能力を上げるだけ。 マカのように、『気』を使うことはできない。 だから…死に往くサガミ先生を、助けることはできない。 応急処置をしても、救急車を呼んでも、もう…。 「…泣いて、くれる…ですね。やっぱ…り、あなたは優しい…コだ」 優しくなんてない! こんな涙なんて…意味が無い。 前へ |次へ |
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