《MUMEI》 「最期の…僕のワガママ、聞いて…もら、えるか…な?」 「…何ですか?」 「キシ…くんと、し…あわせに…なって、くださ…」 アタシとキシは大きく眼を見開いた。 けれど…問いかける間も無く、先生は…命の灯を消してしまった。 アタシの頬から滑り落ちる、冷たくなった手。 笑顔のまま固まってしまった笑顔。 アタシの眼からは、次から次へと涙が溢れ出る。 そんなアタシに影がかかった。 …キシだった。 キシは何も言わず、先生のまぶたを手で落とした。 「キシ…」 「はい」 「アタシは…何を、間違えたの?」 「…ヒミカは何も間違えていませんよ。そしてボクも。…サガミ先生も、ね」 「人を、殺しても?」 「誰だって狂気は持っています。それをコントロールできるかは、自分自身だけです。そして狂気を持つことは誰も否定できませんし、禁止されてもいませんから」 確かに…そうだ。 狂気を持つことは、誰にも否定できないし、禁止されてもいない。 けれど、サガミ先生の狂気を触発させたのは、間違いなくアタシだった。 アタシがいなければ、サガミ先生は優しい先生のままだったのに…! やり切れなかった。 前へ |次へ |
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