《MUMEI》

キシは立ち上がり、ハシゴの方を向いた。

「カミナ」

「…はい、坊ちゃま」

ハシゴを上って来たのは…カミナ先生だ。

…どういうこと?

どうしてキシは、カミナ先生を呼び捨てに…しかもカミナ先生はキシの事を「坊ちゃま」って…。

「紹介が遅れて申し訳ありません。カミナはボクの付き人なんですよ」

キシは気まずそうに、カミナ先生を見た。

「付き…人?」

「ええ。ボティーガードの役目もあります。父がわざわざ講師にまでしまして…その、ボクの意思ではなかったのですが…」

「キシ坊ちゃまは悪くありません。なので、どうかお許しを」

カミナ先生は険しい表情で頭を下げてきた。

そしてキシはアタシを見て…。

「…カミナには今回の事件のことを任せましょう。うまく終わらせてくれますよ」

アタシはしばし考えて…首を横に振った。

「大丈夫ですよ。アナタの血族のことや、サガミ先生のことは伏せて…」

「違うのよ、キシ」

アタシはハッキリ言った。

「この事件、アタシはマカから任せられたの。だから最後まで担当するのは、アタシの役目だから」

そしてアタシは携帯電話を取り出した。

―事件の終幕を、マカに伝える為に。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫