《MUMEI》 キシは立ち上がり、ハシゴの方を向いた。 「カミナ」 「…はい、坊ちゃま」 ハシゴを上って来たのは…カミナ先生だ。 …どういうこと? どうしてキシは、カミナ先生を呼び捨てに…しかもカミナ先生はキシの事を「坊ちゃま」って…。 「紹介が遅れて申し訳ありません。カミナはボクの付き人なんですよ」 キシは気まずそうに、カミナ先生を見た。 「付き…人?」 「ええ。ボティーガードの役目もあります。父がわざわざ講師にまでしまして…その、ボクの意思ではなかったのですが…」 「キシ坊ちゃまは悪くありません。なので、どうかお許しを」 カミナ先生は険しい表情で頭を下げてきた。 そしてキシはアタシを見て…。 「…カミナには今回の事件のことを任せましょう。うまく終わらせてくれますよ」 アタシはしばし考えて…首を横に振った。 「大丈夫ですよ。アナタの血族のことや、サガミ先生のことは伏せて…」 「違うのよ、キシ」 アタシはハッキリ言った。 「この事件、アタシはマカから任せられたの。だから最後まで担当するのは、アタシの役目だから」 そしてアタシは携帯電話を取り出した。 ―事件の終幕を、マカに伝える為に。 前へ |次へ |
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