《MUMEI》 真実の後ソウマの店で、マカは雑誌や新聞をテーブルに広げて見ていた。 例の猟奇事件が、世間から忘れ始めていた。 けれどアタシは暗い表情のままだった。 「…まっ、ご苦労だったな。ヒミカ」 「ありがと。そっちこそ、うまく処理してくれたでしょう?」 「それが仕事だからな。…今回は血族が思わぬところで関わってしまったし」 マカは血族の会議で、この事件の真相は話さなかった。 終わったことだけを告げ、早々に闇に葬った。 先生は遠くへ留学したことにした。その方が…いろいろな人を傷付けずに済む。 多くの人に慕われていた先生。 その裏の顔を、知る者は少なくて良い。 「今回はお咎めなしだが…あまり油断するなよ?」 「懲りたわよ。…もう二度と、外ではやらない」 「その言葉、信じるぞ」 マカは真っ直ぐアタシを見てくる。 だからアタシも見返して、頷いた。 「ぜひそうしてちょうだい。…さて、これからキシとデートなのよ」 「上手くやっているようだな」 「そりゃま、婚約者だからね」 アタシを肩を竦めて見せて、ソウマに笑顔を見せた。 「お茶、ありがと。今度キシを連れて来てもいい?」 「ええ、ぜひお越しください。待っていますよ」 「うん。じゃね、マカ」 「ああ」 アタシは店を出た。 前へ |次へ |
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