《MUMEI》 キシとは、あの公園で待ち合わせをしていた。 彼からの指定だった。 …アレから、キシとは付き合いを続けていた。 だけどどこかギクシャグしているのは、事実だった。 お互いに先生のことは禁句のようになっていて…ちょっと心苦しかった。 公園に着くと、ベンチでキシが待っていた。 「ゴメン、待たせた?」 「とんでもない。ボクはヒミカの為なら、1日だって待てますよ」 「そこまでさせないわよ」 アタシはキシの隣に座って…、キシの肩に寄り掛かった。 キシは何も言わずに、頭を撫でてくれる。 最近ではこうして素直に甘えられるようになった。 それがとても嬉しい反面、罪悪感も拭えなかった。 「…ヒミカ」 「何? キシ」 「一つ、ボクのお願い、聞いてくれませんか?」 「ん?」 アタシは顔を上げた。 優しく、そして悲しそうにキシは微笑んでいた。 「もしボクが、ヒミカよりも先に死んだら…その体を残さず食べていただけますか?」 「はあ?」 何を突拍子もないことを…。 「ボクはアナタが死んだら生きていけませんから、すぐに後を追います。けれどヒミカはボクを食べて、ずっと生きててください」 「どういうお願いよ、それ」 あんまりに勝手すぎる『お願い』に、思わず顔が歪む。 前へ |次へ |
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