《MUMEI》 「ホラ、人間は輪廻転生するって言うじゃないですか。でも体は残ってしまう。どうせ焼かれて骨になるなら、アナタの栄養になりたいと思いましてね」 確かに、血族であるアタシと、人間であるキシとは同じ時間を生きられない。 …やがてキシは歳を取り、死んでしまう。 でも血族であるアタシは、そろそろ成長が止まるだろう。 そして何もなければ、100年以上も生きる。 その間にキシの転生を待つのなんて、苦ではない。 …だからだろうか。 キシは自分を食べて欲しいと言い出したのは。 アタシと愛し合った証拠を、アタシ自身の中に納めたいんだろうな。 「愛するものの一部になれる…。これぞ究極の愛のカタチだとは思いませんか?」 チクッと胸が痛んだ。 それを隠すように、キシに抱きついた。 「…分かったわ。でも…なるべく長生きはしてね?」 「当然ですよ。アナタの為に、生き続けて見せますよ」 キシは優しく抱き締めてくれた。 …ああ、でも気付かれてしまったんだろうな。 サガミ先生の温室には、殺された人間の残骸があった。 どうやら先生は料理教室で料理をした後、温室の野菜の肥料に残骸を使っていたらしい。 キシと共に温室を訪れた時に、アタシは気付いた。 ―死体の匂いに。 だからそこの温室は、こちらで押さえた。 野菜も全て、取っていた。 アタシが食べる為に。 前へ |次へ |
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