《MUMEI》

険しい顔でそう言って、いきなり手を放した。

「うえ〜。顔が変形するぅ」

頬を両手でスリスリする。

思いのほか、熱くなっていた。

…相変わらず情け容赦無いヤツ。

でも、嬉しい一言が聞けた。

だからアイツをじっと見つめる。

「何?」

「…んっ。ちょっと安心。アンタの口から、『好き』って言葉が聞けたから」

「まったく…」

ため息をつくと、今度は優しい笑顔になる。

どきんっ…!

ときめいているうちに、アイツの腕の中に引っ張られた。


「あっ…」

「―好きだ。ずっと前から。昔していた結婚式ゴッコは、俺にとっては本気そのものだったんだぞ?」

「…よく覚えてたわね」

「お前は忘れてたのか?」

「忘れられるワケないでしょ? わたし、アンタとしかしなかったんだから」

「俺だって」

お互い、笑い合う。

あの頃はただ、結婚式ゴッコという遊びが好きだった。

今は、憧れ。

いつか真っ白のウエディングドレスを着て、キレイな教会で結婚式をあげる。

タキシードをビシッ!と着こなした、彼とね♪

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