《MUMEI》 災難のハジマリ「あっ、ケータイ教室に忘れちゃった。ちょっと取ってくるから、ミナ、先に行ってて」 「うん、分かったぁ」 友人のミナを先に移動教室へ向かわせ、私、マカは教室へ早足で戻る。 昼休みが終わり、次は音楽室で音楽の勉強だ。 なのにケータイを机の中に入れっぱなしにしてしまった。 高校三年にもなって、ちょっと情けないかもしれない。 「早く行かないとな」 ぼそっと低く呟き、教室の引き戸を開けた。 「ひっ…!」 …ところが予想外の展開。 一年の時、同じクラスだった女の子が、私の机の中に手を突っ込んでいたのだ。 「…どうしたの?」 あえて明るく聞いてみた。 財布は持っている。貴重品と呼べるのはケータイぐらいだ。 しかし彼女の手には、私のシルバーのケータイが握られている。 「あっあのっ…あのっ!」 …だが、彼女はもう片方の手で、真っ赤なケータイを握り締めている。 「ごっごめんなさいっ!」 そう言って彼女は後ろの引き戸から教室を出て行った。 「…何なんだ? 一体」 私は不審に思いながら、駆け足で自分の机に向かう。 机に手を突っ込み、自分のケータイを取り出した。 そして開けて見る。 次へ |
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