《MUMEI》

『あっ、はじめましてぇ』

バタンッ!

…閉じた。

何か今一瞬…ヘンなのが見えた。

恐る恐るケータイを開く。

『いっきなり閉じるなんてヒドイなぁ。ちゃんと挨拶したのに』

………。

「…何だ? お前は」

ケータイの待ち受け画面に、一人の青少年が写っていた。

確か私の待ち受け画面は、自分で撮った桜の写メだった。

なのにいつの間にか、変な男に代わっている。

『あっ、オレはハズミって言うんだ。よろしくね』

………。

………………。

………………………。

「幻覚か…」

『えっ、イヤっ、違うよ! オレはちゃんとキミのケータイの中にいるんだって!』

しかも会話まで出来る。

酷い幻覚だ。

疲れているんだな。

「さて、授業に遅れる」

私は再びケータイを閉じ、足早に音楽室に向かった。

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