《MUMEI》 知ることの災難その後、私は一切ケータイを開かなかった。 けれど帰り道の途中、ケータイが電話の着信を知らせる音楽が流れ出した。 「あっ、ミナ、ゴメン。ちょっと電話」 「うん、分かった」 ミナから少し離れ、私は電話に出る。 「はい、マカです」 『やぁっと出てくれたぁ!』 …さっきの幻覚の男の声だった。 「間違いです」 そう言ってブチッと電源ごと切る。 「誰からだったぁ?」 「間違い電話だった」 笑顔のミナに、笑顔で返事をする。 「ふぅん。あっ、そう言えばさぁ、【携帯彼氏】って知ってる?」 「何、それ?」 イヤ〜な言葉に、思わず顔が歪む。 「何でも理想の彼氏がケータイで作れるんだって。ケー彼って言うんだよぉ」 「けっけぇかれ?」 略すのも、限度があるだろう…。 「でも単に恋愛シュミレーションゲームみたいなモンでしょ?」 「それがメールしてきたり、電話をかけてきたりもするんだってぇ。あとぉ、フツーにテレビ電話みたいに話せるんだって」 …私の頭の中に、あの男の笑い顔が浮かんだ。 前へ |次へ |
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