《MUMEI》

何かの力が動いている。

ついに私の体は止まってしまった。

彼女との距離は2メートルぐらいなのに!

『マカ!』

しかしハズミの声で、冷静になった。

「こんなのに…負けるかぁ!」

集中して、体の中心に気を溜めた。

そして気は体のすみずみにまで広がっていく。

わずかに体が動き出す。

彼女はすでに、手すりから体を乗り出している。

「うぐぐぐっ…!」

思った以上に、力が強い。

『マカ! 頑張って!』

「分かって…る!」


一度目を閉じた。

体から熱が湧き上がる!

気を体内で爆発させた。

目を開ければ、体は自由に動く。

私は一気に駆け出し、彼女の肩を掴み、そのまま倒れ込んだ。

ぎっギリギリだった…。

すでに彼女の上半身は手すりの向こうにあったから…。

「うっ…」

彼女は苦しそうに顔を歪め、しかし意識は戻らない。

私は彼女の手から、ケータイを奪った。

眼鏡をかけた真面目そうな男が、待ち受けに写っていた。

『邪魔するなよ…!』

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