《MUMEI》

「ヒミカは優秀な男に好かれたものだ」

「本人はそれを喜んではいないみたいだね」

セツカが笑う。…イヤな笑い方をする。

「笑える立場じゃないだろ? セツカ。ウチの恋愛運の無さは、血筋から来ているんだから」

セツカの笑顔が凍った。それこそピキーンッと音が聞こえるようだった。

「ともかく、コレで何とか出来るといいんだが…」

シヅキは心配性だな。…いや、本気で案じてくれるんだから、人間みたいだ。

「ありがとう。何とかしてみせるさ。それよりセツカ」

「なっなに?」

未だに顔が固まったまま、セツカは私を見た。…ちょっと不気味だ。

私はキシから貰った茶封筒を、セツカに差し出した。

「ちょっと読んで見てくれ」

「うん」

セツカは受け取り、中の書類を出して、読んだ。

―十分後。

「…ふぅん。まっ、普通の人間が作ったにしては、立派なんじゃない?」

「このシステムなんだが、ラブゲージというものをなくして、ただケータイに落とすということは可能か?」

私はケータイを取り出し、振った。

二人は顔を見合わせる。

「まあ…不可能ではないと思うけど…」

「どうした? マカ。何でそんなことを言い出す?」

「便利だと思ってな」

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