《MUMEI》 「ホントに、何でっ…!」 澄夜は言葉に詰まり、泣き出してしまった。 未だにハズミの死が、彼を縛り付けてしまう。 「…携帯電話に、遺言めいた文章があったんです」 しかし澄夜は思い出したように言った。 「『ずっと好きだった。愛してる』と…。義弟はきっと誰かに恋をしてたんです。でもムリだと悲観して…」 …それは、私が見た夢だ。 いや、現実にあったことだったんだろう。 「あなたは知りませんか? 羽澄が誰を愛していたか!」 彼の必死の眼が、怖かった。 けれど…言うつもりは無かった。 「ごめんなさい。羽澄さんとは遊んだりするだけの仲だったので、彼の悩みとかは聞いたことがありません」 そう言って首を横に振った。 「そう…でしたか。すみません、取り乱してしまって」 「いえ…。ところで澄夜さん、あなたは誰か交際なさっている方はいらっしゃるんですか?」 「わたしですか? …いえ、羽澄が死んでからは」 澄夜は少し遠い目をして、墓を見つめた。 「羽澄が死ぬ前には、婚約していました。けれど彼の存在がどのぐらい大きかったか自覚してしまって…。解消してしまいましたよ」 「…そうですか」 そこで会話を終わらせようと思った。 私は澄夜に挨拶をし、その場を離れた。 前へ |次へ |
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