《MUMEI》 だがすぐには帰らなかった。 浜辺を歩く。 ケータイを取り出し、ハズミを見た。 「…満足か? お前が願ったことだろう?」 ケータイの中のハズミは、泣き崩れていた。 『ちがっ…! こんなこと、望んだワケじゃっ』 「しかし狙いはあったんだろう? 己が死を以て、義兄の心を捕らえたかったんだろう?」 『うっ…!』 …何となく、気付いていた。 私は海を見た。太陽がオレンジ色に輝いている。 けれど太陽は沈み、夜が訪れる。 …同じように、いつまでも明るいままではいられなかったんだ。 ハズミは。 「お前が愛していたのは、義兄の澄夜だったんだろう?」 『ふぅっ…』 「だが義兄はお前の気持ちに気付かず、女と婚約してしまった。お前に残された道は二つ。一つは良き義弟として死ぬまで振る舞い続けるか、もう一つは…」 自らの死を以て、澄夜の心を自分のモノにするか。 そしてハズミは後者を選んでしまった。 「…このサイトに自らを縛り付けたのは何故だ? お前、女はキライじゃないのか?」 『女は…苦手だったよ』 ハズミは低い声で言った。 『母さんが苦手だった。派手に着飾った女が苦手だった。…そして義母が苦手だったよ』 「キライ、ではなかったのか?」 前へ |次へ |
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