《MUMEI》

「行かないよ」

「行って良いってば!」

わたしは目を覆っている手をはがした。

「用意、してきたんでしょう? もったいないわよ」

彼はわたしがこういう行事に参加できない時、自分も参加しない。

ずっとわたしの側にいてくれるけど…いつまでも迷惑をかけられない。

「行かないって。…お前が行けないのに、俺だけ行っても仕方ないだろう?」

「アンタはわたしと違って、クラスに友達いっぱいいるんだから、行けば楽しいわよ」

「楽しくないよ」

「何でよ!」

思わず怒鳴ってしまう。


「お前がいなきゃつまらないだろう?」

「……えっ?」

「だから、お前が一緒じゃなきゃ楽しめないんだよ。俺は」

「それって…告白?」

「まあな」

…味も素っ気も色気も無い…。

がくっと脱力してしまう。

「それにお前、俺がいないと無茶ばっかするだろ? 俺ぐらいしか相手にならないって」

「どーゆー意味よっ!」

「こんな大きな和風の屋敷に住んでて、しかもお嬢様で病弱。周りからは儚げな美少女なんて言われているが、結構おてんばだしな」

たっ確かに昔から、病弱ながらも暴れてたけど…。

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