《MUMEI》

「ココア!」
ココアの名を呼ぶ声が聞こえてきたのは
現れたその声の主は篠原と同年代くらいのおとこで
ココアの方を見やり、安堵に溜息をついた
「遊馬(あすま)!」
その姿を見るなり、ココアの表情が一気に晴れやかなモノに変わる
どうやらココアの主人らしく、ココアはその傍らへと駆け寄っていった
「……探したよ、ココア。一人であるきまわっちゃ駄目だろう」
その身体を抱き上げてやりながら柔らかく窘めてやれば
ココアは顔を伏せ、ごめんなさいを返す
「兎に角、見つかってよかった。所でココア」
途中言葉を区切り、篠原達へと向いて直りながらココアへ問う事をする遊馬へ
「私が泣いてたらこの人たちが声をかけてくれたの。それでね、一緒に遊馬を探そうって言ってくれて……」
「そうだったか。有り難う御座います」
深々頭を下げてくる遊馬へ篠原は首を緩く振りながら
「……ウチにも同じのが居るからな。お互い様だ」
ショコラの頭を掻いて乱しながら笑って向けた
ソレに促されるように遊馬へと頭を下げるショコラへ
遊馬は僅かに驚いた様な顔をして見せ、だがすぐショコラへと笑みを向けていた
「それじゃ、この子も……」
「そう言う事だ。じゃ、俺らはこれで」
「ココア、またね!」
ココアへと手を振り、遊馬へ軽くあたmを下げると二人は漸く帰路へ着いた
自宅に到着した頃には日も当に暮れ
そのくれて染まっていく朱に、ショコラは窓の外を何思う顔で眺め見ていた
「どした?」
背後から抱いてやりながら耳元へと問うてやれば
上目遣いでショコラは篠原を見上げながら
「……恭弥も、探してくれる?」
「は?」
「もしショコラがココアみたいに迷子になったら、恭弥は探してくれる?」
突然な問い掛け
可愛く首を傾げながら問われ
どう答えて返すのがいいのか解っていた篠原は
だが、篠原は何故か意地悪げな笑みを浮かべて見せた
「さぁ、どうだろうな」
わざと素気なく答えて返せば、ショコラの顔が崩れていく
涙まで眼尻に浮かべてしまい、泣きだしてしまう寸前
篠原はショコラの頬へ触れるだけのキスをしてやった
「馬ー鹿。冗談だって。もしおまえが迷子になったらちゃんと探してやるよ」
「……本当?」
「まぁ、お前は大丈夫だろうけどな」
「どして?」
「お前、いつも俺の服の裾掴んでるから」
この瞬間も掴んでいるショコラの手を指差してやれば
自分でも無意識だったのか、顔を真っ赤にすぐ手を離す
その逃げていこうとする手を、今度は篠原の手が取っていた
「……恭弥?」
「掴むなら、俺の手にしとけ」
それ以上、何を言う事もしない篠原だったが
だが、その裏に隠されている優しさが、ショコラは素直に嬉しく感じた
重ねられた篠原の手を強く握り返しながら
その温もりを満喫するショコラだった……

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