《MUMEI》
ドクター・ライト
クーが帰った後、オゾンの部屋には一人の老人がいた。


彼の名前はライト


職業は、医者、…だった。


既に引退した身であるライトは、病院を辞めた後、オゾンの専属医師になって欲しいとオゾンの父親


O2カンパニー社長に頼まれたのだった。


このわしに、息子を任せるとはな…


ライトの心中は複雑だった。


何故なら、ライトはオゾンの母親


つまり、社長の妻の主治医だったのだ。


その人物は、ここにはいない。


現代医学では治療不可能な肺病の、その人物を、社長は…


そこまでして、妻を、愛するのか


ライトは、社長の妻に対する愛情に、恐怖を覚えた。


「…先生?」

「おぉ、すまない。今日は顔色がいいようだね」

「うん!あのね、今日はクーと鬼ごっこしたんだ!」

「そうかそうか」


…良かった


ライトは、オゾンが母親より症状が軽い事に、心底ホッとしていた。


でなければ、愛する妻にそっくりなこの息子の為に、社長は何をするかわからないから。


そんなライトに、オゾンは笑顔で言った。


「じきに、外でも鬼ごっこできるようになるんだよ!」

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