《MUMEI》
連絡
 素早く辺りに視線を走らせる。
どこにも隠れられそうな場所はない。
もし見つかったのなら、戦うしかない。
二人の表情が緊張で引き攣る。

カツカツカツ……

 足音は、バス停のすぐ前で止まった。
ガチャっと、何か金属音が聞こえる。

もう、だめだ。

ユウゴは覚悟を決めて、さっと立ち上がった。

「おい!」
 ユウゴとユキナはビクッと体を震わせた。
しかし、その声は二人に向けられたものではなかった。
「連絡だ。大通りのデパートに数十人」
男の声に、複数の足音はバタバタと遠ざかって行った。
そして、バタンとドアを閉める音が響いたかと思うと、トラックのエンジン音は消えていった。

 二人は同時に大きく息を吐く。
ユウゴは力が抜けたようにヘナヘナと再びその場に座り込んだ。
「助かったな」
「見つかったかと思ったのに……」
ユキナの言葉にユウゴは頷いた。
「でも、大通りのデパートに数十人って?」
「……由井たち以外にもいるんじゃないか?同じような活動してる連中が」
「そして、ミサみたいな裏切り者が?」
ユウゴは答えず、立ち上がった。
「そろそろ、行こう」
「……うん」
「これ、どっかに捨てて行こう。誰かに使われたらやっかいだし」
「だね」
ユウゴは、ばらまいた部品をすべてバッグへ戻し、それを抱えて歩き出した。

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