《MUMEI》

「眼も気に入った。野心を持っている眼だな」

やっ野心!? そんな大それたもの、持った覚えは無い!

「俺の妻になれ。お前の望むもの、全て与えてやろう」

…この言葉に、ブチッと切れた。

「なめないでっ!」

どんっと彼の体を叩いて、離れた。

「あなたに与えられるものだけで満足するような女じゃないの! 私はちゃんと勉強して、大学も出て、世界相手に働くんだから!」

………。

沈黙、3分後。

時間と共に私の興奮も冷めていき…自分がやった失態で血の気も引いた。

今…何を言ったの? 私。

大学も出て、世界相手に働いているのは彼の方なのに…。

きっと世間知らずのお嬢様が何を言っているんだって、呆れられている…。

かと思ったら。

「くっ…ははははっ!」

お腹を抱えて大爆笑。

「そっそんなに笑うこと、ないじゃない…」

興奮したせいか、涙がボロボロ出てきた。

「いっいや、悪い。そんな大きな夢を持っていたなんて、さすがの俺も考えていなかったからな。そうか、世界か。それはさすがに与えられないな」

笑いながら、私の頬を伝う涙を手で拭ってくれる。

「でもお前と二人なら、可能かもな」

「あっあなたはすでに叶っているじゃない!」

「それはまだ、家の力だ」

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