《MUMEI》

けれど二人の体には、殴られたような蹴られたような跡がある。

ちなみに二人を囲んでいるクラスメートの中には、わたしといつも一緒にいるグループのコもいた。

「ルナ…ちゃん。何で…」

グループの中の一人の女の子が、消え入りそうな声で言ってきた。

「忘れ物しちゃってさ。ちょっとそこ、どいてくんない?」

わたしは優等生クンを指さした。

彼は驚きつつも、避けてくれる。

わたしは机の中を覗き込み、目的の物を発見した!

「やった♪ やっぱりここにあった!」

手帳を取り出し、一安心。

「じゃ、お邪魔してゴメンなさいね。わたしは帰るわ」

シュタッと手を上げ、わたしは教室から出た。

もうすぐ下校時刻だ。先生が見回りに来ちゃう。


「ちょっと待って!」

グイッと腕を捕まれ、わたしは振り返った。

「ん? どうしたの? あっ、途中まで一緒に帰る?」

「…そうだね。話したいこともあるし、一緒に帰ろう」

「うん!」

わたしはランドセルに手帳を入れて、上機嫌で鼻歌まで歌ってしまう。

学校を出たところで、彼が声をかけてきた。

「驚かないんだね?」

「何が?」

「イジメ。目撃しても、全然動じない」

柔らかな物腰で、彼は言った。楽しそうに。

「動じることのことかしら?」

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫