《MUMEI》
二重人格!?
.

わたしはブラウスの胸元を、ギュッと握りしめる。


「マジで危ないところだった…ありがとう」


呟いた声が、震えた。

廉が現れなければ、わたしは間違いなく、清水君に酷いことをされていただろう。

清水君の狂気じみた顔を思い出すと、今さら恐怖が蘇ってきた。膝がカクカクと震え、目に涙が込み上げる。



−−−勿体振るなよ、今さらだろ?



清水君に言われた、あの台詞。

昔、同じことを言われたことがある…。


『大丈夫だよ、怖くないって』

『嫌だよ、やめて』

『いいじゃん、俺たち付き合ってんだろ?』

『いや!』

『勿体振るなよ!つまんねーオンナ!!』



−−−モ ッ タ イ ブ ル ナ ヨ …。



−−−ツ マ ン ネ ー オ ン ナ …。



蘇ってきた、わたしを傷つける数々の言葉たち。

思い出したくない過去に触れ、わたしは目を伏せた。浮かんだ涙が溢れそうになる。


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