《MUMEI》

そう言って花束を彼に押し付けた。

「えっ、あっ」

彼はわたしの顔を見て、思い出したようだった。

「それじゃ! 卒業おめでとう!」

わたしは電車を降りようとして…。

「待って!」

再び腕を捕まれ…電車の中に引っ張られた。

プシュー… ガタンゴトンッ

…電車は動き出してしまった。

「あっ、ゴメン。でもこのままじゃ、イヤだったから」

ぎゅうっと腕を強く捕まれた。

「ゴメン…。ホントはいつも、オレの方から声かけなきゃって思ってたんだけど…。緊張してできなくて、でもキミの方から声かけてくれて、嬉しかった」

どくんっ…

心臓が高鳴った。

「こっち…向いて」

わたしは泣き出しそうなのを堪えて、振り返った。

彼もまた、泣きそうな顔をしていた。

そしてわたしは彼に抱きつき、キスをした。

彼はわたしをきつく抱き締めて、二人の距離はゼロになる。

「…ずっと、こうしたかったの」

「オレも…。ゴメン、待たせて」

しばらく抱き合った後、再び電車が止まる。

「あっ、オレここで降りるんだ」

「…隣町だったの」

結構近かった。

「うん。良かったら、これからオレん家に来ない?」

「えっ?」

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