《MUMEI》

アオイは成績優秀者で、スポーツもできる。

家柄も申し分なく、母親なんて教育委員会を勤めているぐらいだ。

まあ学校にいる限り、彼に逆らうなんて誰も出来ないだろうな。

彼は―小賢しいから。

移動教室の時間になり、近くにいた仲の良いコに話かけようとした。

けれど彼女は顔をそむけ、他のコとそそくさと行ってしまった…。

彼女は昨日、いじめる側にいたからなぁ。

気まずいんだろうな。

「あれ? 一人?」

アオイがまた声をかけてくる。

「うん。先に行かれちゃった」

「じゃあ、僕と一緒に行こうよ」

「お取り巻きは?」

「先に行っちゃったよ。薄情だよね」

彼は困ったというように笑い、肩を竦めて見せる。

―ウソ、だな。

でも一人で移動はさみしい。

「なら、一緒に行きましょうか。昨日の話の続き、しましょう?」

「いいねぇ。楽しく移動できそうだ」

そして二人で移動した。

…その後もクラスメート達からは無視され続け、何故かアオイだけが話しかけてきた。

……新手のイジメの形なのかしら?

頭を悩ませている間にも、アオイは話しかけてくる。

彼と話をするのは楽しいので、わたしは彼を受け入れていた。

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