《MUMEI》

「何かまだ…隠してる?」

「あっあのね…」

彼女はしばらく、口を開けたり閉じたりを繰り返した。

考えが決まらないのだろう。

でもわたしはじっくり待った。

…やがて、根を切らせたのは彼女の方だった。

「…委員長、ルナちゃんと仲良くするようになってから、あたし達にも優しくなったの」

「それは良いことじゃない」

「うん…。でもその優しさって、結局はあたし達が委員長の言うことに従っているから…」

ああ…そういうことか。

わたしをイジメ続けていれば、クラスメート達の安全は保障される。

けれど余計なことをわたしが彼に言えば、また元通りになる。

そのことを怖がっている。

クラスメート全員が。

「そうね…。まっ、自分が可愛いのって悪くはないわよ」

そう言って、わたしは肩を竦めた。

「…ゴメン、ね」

「いいわよ。真実を知ってスッキリしたし、これからわたしがすべき事も分かったわ」

「えっ?」

驚いて顔を上げた彼女に、わたしは笑顔を浮かべて見せた。

「まっ、支配者ってのは自信がある時だけのものよ。一回引っ繰り返れば、二度と立ち直れないしね」

それが小学生ならば、当然のこと。

まだ精神的にも幼いのだから。

わたしは彼のことを思い浮かべ、深く息を吐いた。

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