《MUMEI》 . 絵麻は、そう?と不思議そうな顔をする。 「昔はもっと帰るの遅かったじゃん?なんだっけ…ホラ、【武田先輩】と付き合ってた頃!」 予想だにしていなかった名前を出されて、わたしは食べていたクッキーを吹き出して、そのままむせてしまう。 ゴホゴホと激しく咳込んでいるわたしを見て、絵麻はあからさまに嫌な顔をして、きったないなー、と文句を言った。 わたしは涙目になりながら、絵麻を睨む。 「あんたは、一体いつの話をしてんのよッ!?」 怒鳴り付けると、絵麻は肩をすくめた。 「決まってんじゃん、中学の頃の話でしょ?」 なに?ボケた??と、失礼なことも付け加えてくる。 素直すぎる絵麻に呆れ、そういうことじゃなくて…とぼやいた。 「先輩とはとっくに別れてる。3年も昔のの話だよ。今さら、なに持ち出してんの」 不機嫌に呟き、晃のクッキーを一口つまむ。 わたしがなぜ怒っているのか理解出来ないらしく、絵麻はまた首を傾げる。 「別れたのは知ってるよ。お姉ちゃん、元気なかったもんね」 飄々と答える妹に、わたしは冷たい一瞥を与えたが、全く気づかなかったようだ。 . 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |