《MUMEI》

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彼女は昔を思い起こすような遠い目をして続ける。


「欝陶しいくらい、いつも一緒にいてさー。お母さん、心配してたんだよ?『毎日、帰ってくるの遅い』って。仲良さそうだったのに…」


−−−なんで別れちゃったの??


いきなり尋ねられ、クッキーを口に入れようとした手を止める。

ゆっくりと顔をあげ、絵麻を見た。



遠くから、懐かしい声が、聞こえてくる…。



『俺のこと、好きなんだろ!?』

『言うこと聞けよ!』

『つまんねーオンナ!!』



………あぁ、なぜだろう。

今までずっと、思い出さないようにしてたのに。



わたしはゆるりとひとつ、瞬くと、彼女から目を逸らし、


べつに、と、素っ気なく答えた。


「つまらないケンカをしたの、それだけ」


その言葉にウソは無かった。


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