《MUMEI》
チャンネル争い
.

心の中で散々毒づいて、それからテレビへ視線を流す。


テレビでの【レン】は、物腰が柔らかで、丁寧な口調で、どう見ても爽やか好青年といった感じだ。

教室で見せた、あの悪魔のような廉は、どこにもいない。



………この猫かぶりがッ!!



『…じゃあ、スタンバイお願いしま〜す!!』


司会者がそう声をかけると、【レン】は他のメンバーとともに、画面から消えた。

それを見計らって、わたしはリモコンでチャンネルをいきなり変える。画面に険しい顔つきをした、評論家らしきひとが、『戦車がどうの』とか、『テロがなんだ』とか、なにやら難しい話を展開している様子が映った。

途端、


「やだーッ!!変えないでよッ!!」


わたしの隣から絵麻の悲鳴が上がる。

彼女の顔を見ずにわたしは、コレ見たかったのよ、と平然とウソをついた。


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