《MUMEI》 「お会計、200円になります」 一日明けた翌日の仕事帰り 篠原の姿は行きつけのコンビニに在った 何となく食べたくなったチョコレートを買いに寄ったそこで 意外な人物に篠原は遭遇する ココアの主人である三浦 遊馬 眼が合うなり会釈をして来る遊馬へ篠原も返してやれば 昨日の礼を改めて言われた 「昨日は本当にありがとうございます。本当に助かりました」 「別に改まって礼言われる程のことしてねぇよ」 畏まれるのは苦手だ、と苦笑する篠原へ 遊馬も笑い返しながら 「でも、驚きました。俺以外にもチョコレートフェアリーと一緒に居る人がいたなんて」 互いに買い物は続けながら、何となしに話しは始まり 心底意外そうな遊馬へ、篠原もそれに同意してやるかの様に笑う声を零した 「確かにな。実は俺も少しだけ驚いてる」 「その……、チョコレート フェアリーとは何処で?」 出会いの経緯を尋ねられ、篠原は暫く考えこみ そして買い物かごに入れたチョコレートを指差しながら 「多分これ、なんだろうな」 そのチョコレートがきっかけになったのだろう、と笑って見せる篠原へ 遊馬もどうやら同じなのか、自身のかごの中のチョコレートを持って見せた 「同じ、ですね。でも、チョコレート フェアリーって一体何なんでしょうね。何しに、俺達の処に来たんでしょう?」 首をかしげ問うてくる遊馬 だが篠原も問う側である以上返してやれる答えなど持ち合わせておらず考えこんでしまう 「……そう、だな。聞いてみりゃ早いんだろうが……」 今の今まで、気になりながらも問う事をしなかったのは その理由がどうでもいいと思えてしまう程にショコラの存在が篠原にとって当然になりつつあったからだ ソレを聞いてしまえば、すぐにでも居なくなりそうな気がしてきけずに、そしてこれからも篠原からは聞かずに、と思う 「……ま、話す事が必要になったら向こうからするだろ。こっちから問い質すようなことじゃねぇだろうし」 「それも、そうですね。そうだ、今度またココアにあってやって下さい。ショコラちゃんにあってあいつ、すごく喜んでたから」 言いながら遊馬はスーツの胸ポケットから名刺を取り出し ソコへ携帯の番号とメールアドレスを掻き篠原へと渡してくる ソレを受け取ってやりながら 「何だったら、いまからどっかで飯でも食うか?ショコラとココアも連れて」 「え?」 突然の篠原の申し出に虚をつかれた様な遊馬だったが すぐさま頷いて返してきた 「いいですね。ココアもきっと喜ぶと思います」 「じゃ、7時にあそこのファミレスでいいか?」 「解りました。じゃ、後で」 軽く手を振り、篠原は取り敢えずの帰宅 ショコラの出迎えに笑みを返してやりながら背広を脱ぎ棄て普段着へ 「何所か、行くの?」 だが居間に腰を据える事をしない篠原へと首を傾げれば 篠原は僅かに笑う声を漏らし一言、いい処とだけ返してやった 当然それで理解など出来なかったショコラは益々首を傾げてしまい そんなショコラを、構わず車へと乗せると、目的地へと篠原は向かう 遊馬との待ち合わせ場所であるファミレス 到着すれば、すでに遊馬とココアの姿あった 「ココア!」 車を駐車場へと停めてやれば ショコラは車を飛び出しココアの元へ 二人じゃれ合っているその様はまるで小動物同士が戯れている様で 無意識に、篠原は笑う声を零す 「取り敢えず、入るか」 二人の頭の上で手を弾ませてやる篠原がそう促して 四人揃って店の中へ店員に関はと案内され、何を食べようかとメニューを睨みつけ思案する 篠原はすぐに決め、他の三人にも伺いを立てた 遊馬は決まった、と頷いてきたが ショコラとココアはまだの様で だが開いているのは既にデザートのそれ 篠原はその事に苦笑を浮かべながらも取り敢えずは何を言ってやることもせずにおいた 「恭弥、遊馬。ショコラとココア、これがいいの」 指差して見せたソレは 以前、篠原と二人でファミレスに行った際にショコラが注文した巨大なパフェ 食べきる事の出来なかったソレに、ココアと二人がかりで挑もうとでもしているのか ショコラはスプーンを握りしめていた 「……これにしとけ。お前ら二人じゃ確実に無理だから」 意気込むショコラ達を宥めてやりながら篠原が指差したそれは 前へ |次へ |
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