《MUMEI》
あたたかなキス
「う〜ん…」

アタシはうなる。

「どうした? …あぁ、ホラ。口元付いてる」

「んんっ」

彼に口元をハンカチで拭かれた。

お昼休み、生徒会室で彼と二人っきりでお弁当を食べていた。

我が高校の生徒会長が彼だから、こうやって貸切状態でいられるんだけど…。

ととっ。話がズレた。

「いや、最近よくあることなんだけど」

彼が作ってくれたお弁当を食べながら、思い出す。

「うん」

「アタシとアンタ、付き合ってたっけ?」

「…うん?」

あっ、今の微妙な間はマズいかも。

やっぱり言うべきじゃなかったか。

彼とは結構長い付き合い。

でも恋愛感情を持っているかと聞かれても、首を傾げる。

彼はアタシにお弁当を毎日作ってくれる。

頭が良いから、勉強も教えてくれる。

よく二人っきりで遊びに行く。

アタシのワガママを、何でも聞いてくれる。

そして時々…キスをしたり、抱き合ったりしている。

…付き合っていると、一般的には言えるだろうな。

だから周囲の人達からは、「付き合っているんでしょ?」と言われる。

でもアタシは否定する。

だから驚かれる。

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