《MUMEI》

「大人しく、僕のものになるっていうのは? クラスメート達のことは、できれば黙認で」

「してあげたいのも山々だけどね。さすがに知ってて気分の良いものじゃないわ」

わたしも肩を竦めて見せる。

「だからわたしだけに集中してくれない? お互い両思いなんだから、恋愛に集中しましょうよ」

「僕もそうしたいんだけどね。…でも僕は支配力がある。それを試したい時期なんだよ」

厄介なこと…。

しかし本来なら心ときめく恋愛の話のハズなのに、お互いに冷めまくっているのが、実にわたし達らしい。

「わたし、アオイのこと好きよ。だからキライになりたくないの」

「僕もルナのことが好きだよ。一人占めしたい。でもそのお願いは、聞き入れられないよ」

そう言って、アオイは笑った。

付き合いの深さから、この笑みが危険なことを察した。

身構えると、アオイは指を鳴らした。

すると木の影から、5人の男性が現れた。全員黒いスーツを着ている。

「本来は僕のボディーガード。でも僕の命令には忠実に従ってくれるんだ」

「わたしを黙らせる気?」

「まさか」

アオイは心底おかしそうに笑った。

「ルナは親戚のお姉さんと一緒に暮らしているんだよね? ご両親は?」

「死んでると思うわ。しばらく連絡こないしね」

わたしはあっさりと答えた。

「ふふっ。なら好都合。ルナが突然いなくなっても、大丈夫そうだね」

…この言い方だと、拉致・監禁ってとこかな?

やっぱり危険思考の持ち主ね、アオイって。

でもそんなアオイがまだ好き。

……わたしもイかれているわね。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫