《MUMEI》

「そう…。残念ね」

わたしはアオイに微笑みかける。

「今晩は満月。血族の集会があってね。サボるワケにはいかないのよ」

ランドセルを地面に下ろして、体を動かした。

「5人も相手に、頑張らないほうがいいよ。ケガさせたくないし」

「…わたしも大概『にぶい』って言われる方だけど、アオイも良い勝負よね」

くすっと笑って、目を閉じた。

そしてゆっくりと目を開けると、驚いた表情のアオイの顔が映った。

「眼が…赤い?」

「わたしが普通の人間だとでも思ってた? てっきり何かを勘付かれて、近付いてきたのかと思ってたんだけどね」

ばきっと首と手首を鳴らす。

「…どういうこと?」

「お父様とお母様から聞いていないの? わたしの血族のこと」

「血族…?」

アオイはしばらく考え込んだ。

そしてハッと顔を上げた。

「もしかして…!」

「思い当たった? あなたの一族と、わたしの血族って仲悪いのよねぇ」

彼の表情に、緊張が走る。

「だから5人もボディーガードを付けられたのよ。アオイ、一族の中でも優秀だから」

「どこまで…僕の一族のことを知っている?」

「あなた達がわたしの血族を知っている程度よ」

そう言ってクスクス笑った。

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