《MUMEI》

わたし達は笑顔で手を振った。

マカは週に一度、実家に帰ってくるから、さみしくはない。

そう…さみしくなんて、ない。

この60年近く、小学校に転入しては卒業して、また転入して…を繰り返してきた。

だから子供の成長がどんなものか、分かっている。

彼はきっと、若き日の過ちだと笑うだろう。

同じように、時を生きる人間と恋をして…幸せになってほしい。

わたしのように、肉体の年齢が止まってしまうと、どうしても精神的にも止まってしまうようだ。

だから…ずっと小学生でいたんだろうな。

「いや、いたかった。…かな?」

もう過去形だ。


マカのマンションを出て、駅前に向かう。

ソウマが車で送ってくれると言うので、まずはソウマの店に行かなきゃ。

…その途中で、あの公園の前に来た。

今ではすっかり思い出の場所、だ。

ふと心引かれて、わたしは公園に入った。

平日の昼間など、誰もいないだろう。

最後の思い出の場所を訪れるのも悪くは無い。

そう思って例の場所に行ったら…。

「…アオイ?」

「ルナ…」

アオイが…いた。

木に寄り掛かって、わたしを見ている。

わたしは咄嗟に周囲の気配を探った。

…他に人はいないようだ。

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