《MUMEI》

「周囲のものが僕等を許してくれないというなら、二人で逃げよう! そして一緒にいようよ」

「アオイ、でも…」

それは不可能に近い。

一族と血族が動けば、必ず見つかってしまう。

「大丈夫!」

けどアオイの眼は燃えていた。

「僕の頭脳と、ルナの力があれば、どんなことだって可能だよ」

「…また言うわね」

「言うよ。ルナと一緒にいられるなら、どんなことだって言うし、やってやる」

静かに、でもとても強い意思を感じる。

「だからルナ。僕と一緒にいて。僕の方が先に逝ってしまう可能性は高いけど…。それでも二人で一緒にいられる可能性を、絶対に見付け出してみせるから!」

…若いって、やっぱり良いな。

ムリだって分かっていることでも、可能にしようと頑張るんだから…。

「なら、行きましょうか」

わたしはアオイの手を、ぎゅっと握り締めた。

「えっ?」

「二人で駆け落ちなんて、久し振りだわ! うふふ、心が躍っちゃう♪」

わたしは顔が自然にニヤけるのを感じた。

「…久し振りって、昔あったの?」

「大昔よ! でも…そうね。途中で話してあげるわ」

二人で歩き出す。

「わたしのことを、ね。時間はたっぷりあるんだし、じっくり聞かせてあげるわ」

アオイは深く息を吐いた後、いつもの笑みを浮かべた。

「それじゃ、じっくり聞かせてもらおうかな。キミが愛した男達のことを」

「ええ。そしてその締め括りは、アオイで決定したいわ」

「したい、じゃなくて、するんだよ」

少しむくれたアオイの頬に、わたしはキスをした。

「―大好きよ、アオイ」

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