《MUMEI》 . ぼーっとしているわたしのもとに、晃が近寄ってきた。 「どしたの?今日、ずっとぼんやりしてるよね?大丈夫?」 なんかあった?と心配そうに尋ねてくる。わたしは晃を見上げ、瞬いた。 晃は、ひとの気持ちに、敏感だ…。 昨日からずっと、わたしは鬱屈とした気持ちを抱いていた。 清水君や、廉のことだけでなく、 昔の嫌な記憶をが、思い出してしまったから。 『つまんねーオンナ!!』 気をゆるせば、たちまち蘇ってくる、あの言葉。 不機嫌そうに歪む眉。普段とは違う、怒りに満ちた抑揚。 ………もう、吹っ切ったつもりだったんだけどなァ。 . 前へ |次へ |
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