《MUMEI》 「わっ分かったわ。わたしの負けよ」 わたしは降参した。 年下のコと言い合っていても、負けた気分になるだけ。 「ホント! ありがと、おねーさん!」 そう言って男の子はクッキーを持って、走り去った。 でも…何でこんな遅い時間に、子供が? わたしは首を傾げつつも、家に帰った。 それからというもの、男の子は毎日のように、お店に来た。 何となくわたしが男の子の相手をした。 そして話すようになって、何度か一緒に遊んで…気付いてしまった。 男の子に、心惹かれてしまった自分に。 しかし…歳の差が問題。 男の子は出会った時、何と小学5年生! 1年経った今では、6年生になった。 そしてわたしはと言うと…当時、高校2年生。 現在、高校3年生…。 『犯罪』の二文字が、頭の中を駆け巡る。 「う〜」 うなりながらも、ケーキを作る手は止まらない。 よりにもよって、今日は男の子の誕生日。 プレゼントはわたしの手作りのお菓子が良いというので、男の子の好きなチョコレートケーキを作っていた。 こういう特別な日にこそ、告白する絶好のチャンスだけど…。 断られるのならまだしも、気味悪がられたら立ち直れない。 …そのぐらい、大好きだから。 嫌われたくはない。 前へ |次へ |
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