《MUMEI》

「はぁ…」

ため息をつきながらも、ケーキは完成。

うん! 立派な出来だ。

…男の子と出会ってから、わたしには変化が起きた。

恋をしているせいか、作るお菓子の評判がとても良い。

人気商品になっているものもあるぐらい。

でも…さすがに失恋したら、落ちるかな?

まっ、それでもわたしは…。

「って、いけない!」

ぼ〜としているうちに、待ち合わせの時間が近くなっていた。

慌ててラッピングして、店を飛び出した。

今日は男の子の誕生日だから、わたしの家に招待していた。

家に帰って準備をしていると、インターホンが鳴った。

「あっ、はいはい!」

わたしは玄関に向かった。

扉を開けると、

「こんにちは、おねーさん。お招きありがと」

ニコッと天使の笑顔で、男の子が立っていた。

「あっ、うん。いらっしゃい。どうぞ、あがって」

赤くなる顔を手で押さえながら、わたしは平常心を心掛けた。

テーブルにセットされたお菓子を見て、男の子は目を輝かせた。

「すっごいね! コレ、全部おねーさんが?」

「もちろん! 特にご注文のケーキは、頑張りました」

テーブルの上には、立派にデコレーションされたチョコレートケーキがある。

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