《MUMEI》

男の子は甘い物が好きみたいで、常々ホールでケーキを食べたいと言っていた。

だから1番小さなホールサイズで、ケーキを焼いた。

「コレはキミが一人で食べて良いんだよ?」

「やった! おねーさん、お茶ちょうだい」

「はいはい」

紅茶を淹れると、男の子はとっとと食べ始めていた。

嬉しそうに食べているし、今日は誕生日だから、細かいところで怒るのはやめておこう。

…にしても、可愛いなぁ。

甘い物を本当に幸せそうな顔で食べる。

でも普段はお澄まし顔で、子供らしくない。

……きっとこの二面性に惹かれたんだろうな。

どうしようもないほど、このコが好き。

あっ、目の前に『犯罪』の二文字がチラつく…。

「…ねぇ、おねーさん」

「んっ? なぁに?」

「そろそろ僕に言わなきゃいけないことがあるんじゃない?」

「えっ!?」

男の子はケーキを食べながら、ニヤニヤしてる。

「僕から先に言うとね。1年前のあの日、おねーさんを待ち伏せしてたんだ」

「えっええっ!? 何で、どうして!」

「だっておねーさん、いつまでも出てこないんだもん。僕心配で、外で待ってたんだ。そしたらさ…。まっ、結果オーライだよね」

「うぐぐっ…!」

うっ上手いように誘導されてる!?

でも…。

わたしは心を決めて、小さな唇に…キスをした。

チョコクリームが甘い…いつもよりも。

「好き、よ」

「…うん!」

でもこのコの甘い笑顔に比べたら…。

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