《MUMEI》 . そのとき、 由紀が、思い出したように、あっ!!と声をあげた。 「早く帰らねーと!!用事あるんだよねー」 ホラ行くぞ☆と、わたしに声をかけて、腕を引っ張る。 「え…ちょっと、いいの?」 わたしは困惑して、由紀の顔とカナちゃんの顔を見比べた。 カナちゃんはわたしたちの背中に向けて、待ちなさいよッ!と、怒鳴った。 「まだ、話は終わってないわッ!!羽柴君てばッ!!」 由紀はカナちゃんから逃げるように、わたしの腕を取ったまま、いきなり走り出す。 グイグイと引っ張られるような体勢で、わたしも、彼の後ろから駆け出した。 由紀の背中を見つめながら、走りつづけるわたしのあとを、 「待ってよ、羽柴君!!」 切なげなカナちゃんの声だけが、ずっと、追いかけてきていた。 ****** 前へ |次へ |
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