《MUMEI》

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由紀は困ったように眉を歪めて、まだ続ける。


「あそこまですごい剣幕で追いかけまわされると、いくら俺でも、さすがに引くよ〜!」


迷惑そうに文句を連ねる由紀の顔を眺めて、

わたしはふと、思った。



………どうしてだろうか。



由紀は、いつも通りの由紀のはずなのに。

オンナにだらし無くて、

取っ替え引っ替え、ヤリまくってるような男だって、

ずっと昔から、わかってるはずなのに。


どうして、


こんな、


言いようのない、嫌悪感を抱いてしまうのだろう。



わたしは、ひとつ瞬いて、

ねぇ、と呼びかけた。

由紀がわたしの顔を見たのを確認してから、

言葉を紡ぐ。


「いい加減にしなよ」


わたしの言葉に、由紀は聞こえ無かったのか、え?と首を傾げた。


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