《MUMEI》 . 尋ねると、由紀は表情を崩さず、続けた。 「『揃いも揃って』って、お前、『あのひと』のこと、言ってんの?」 聞いた瞬間、 カッと頭に血が上る。 「違うわよ!」 反射的に大声で否定したが、由紀は怯まなかった。 彼は飄々と言葉を紡ぐ。 「昔の話だろ?『あのひと』だって、もう過去のことだって割り切って…」 たまらず、わたしは、由紀、と名前を呼んで、彼の言葉を遮り、 全力で睨みつけ、続ける。 「あんたの言う通り、3年も昔のことだよ。もう、関係ないの。今さらわたしの行動に、いちいち『あのひと』のこと絡めないで」 厳しい声で言うと、由紀は頭を振った。 「お前が『オトモダチ』とか、ワケわかんねーこと言い出したの、『あのひと』と別れてからじゃん。関係あるだろ」 わたしは言い返せなかった。事実だった。 ………『あのひと』と別れてから、わたしは−−−。 . 前へ |次へ |
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