《MUMEI》 . 黙り込んだわたしに、由紀はさらに追いうちをかける。 「いい加減、立ち直れよ。ちゃんと向き合えよ…」 由紀は、下駄箱についていた手を、グッと握りしめる。 そして、切ない声で、呟いた。 「苦しいなら、辛いなら、俺が請け負ってやるから…」 同情めいた、由紀の台詞に、 もう、堪えられなかった。 わたしは力任せにローファーを床にたたき付ける。乾いた音が、昇降口に響いた。 由紀はビックリしたようで、わたしから少し距離を取る。その隙に、わたしは上履きを脱ぎ、下駄箱にしまうと、ローファーを突っかけた。 「…話にならない。帰る」 素っ気なく、早口に言い、わたしは由紀の脇を摺り抜けて歩きだした。 待てよ!と、由紀が、めずらしく怒ったような口調で呼びかけたが、無視した。イライラが止まらない。由紀にも、自分にも。 そのまま、一度も振り返らず、わたしは学校から立ち去った……。 ****** 前へ |次へ |
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