《MUMEI》

「おい、マル。本当にメタルスライムなんていんのかよ?」


半日以上、山道を歩き続けたが、金属製のスライムの姿など、影も形も見当たらない。


アキラの表情からは、明らかな苛立ちが伺えた。


「イライラすんなよ、アキラぁ。目撃者は、山ほどいるんだ。捕まえりゃあ、俺達、一躍ヒーローだぜッ!?」


「…興味ねぇよ」と、アキラは、マルの計画を一蹴したが、本心では、村の英雄になりたかった。



妹である『ヒミコ』が、村人に崇められる役職『神の子』に選ばれてからずっと…。


神の子には、専属の護衛が一人付く決まりがある…。



その護衛に、選ばれるには、実力を示さなければならない。




村の腕自慢達を相手に、喧嘩を幾度となく繰り広げ、連戦連勝を飾ったが、アキラの悪評を広めただけに終わった…。


この山にメタルスライムが現れた事は、チャンスなのだ。

なんとしても、メタルスライムを倒し、村人達に己の実力を認めさせてやりたい…。


アキラは、ヒミコが神の子に選ばれた事を、素直に祝福出来ないでいたが
本心では、妹の役に立ちたかったのだ。


護衛になりたい…。

アキラは、願っていた。

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