《MUMEI》

マカは教室内にいた生徒に声をかけ、リリスのことを聞いた。

例の少女と仲が良かったと聞いて、わずかに顔をしかめた。

けれどすぐに礼を言って、教室を出た。

廊下を歩いている最中、マカの頭の中はリリスのことでいっぱいだった。

何の変哲もない普通の少女だった彼女。

しかしリリスと接触することで、変化が起きていたようだった。

マカは自分自身にも、何かマジナイをかけられていることに、気付いていた。

けれど大したことではないと、思っていたのが間違いだったようだ。

やがてミナへと歪な形でマジナイは向けられ…あんなことに。

「リリス、か…」

マカは険しい顔で、窓の外を見た。

真っ黒なカラスが、曇った空の中を飛んでいた。

リリス―その意味は、夜の女性。

夜の妖怪とも女神とも言われる、神話の生き物。

その名を名乗るのは…。

「まさか、日本に来るとはな…」

マカは呟き、深く深く息を吐いた。

「―これから忙しくなりそうだ」

そう言って、ミナの待つ教室へ足を進めた。

一方、リリスはクラスメートに囲まれながら、笑顔を浮かべていた。

しかしふと、真顔になり俯いた。

口元を手で覆い隠し、堪え切れないイヤな笑みを浮かべた。

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